Jan 28, 2014

6m QRP 真空管リニアアンプ(その1)

1.概要
フィールドでの超お遊び的真空管アンプを、真空管で遊べる間に作っておきたいと思い、検討してみました。この構想は10年以上前にさかのぼり、その当時は、まだパーツがある程度容易に入手できたのですが、さすがに現在では、秋葉原でも部品を揃えるのが困難になってきました。また、真空管アンプを50年前の回路図や部品表を基に作ってもまったく面白みがありません。そこで、出来る限り、最新の技術と部品を駆使して、作ってみることにしました。
ここ最近の状況変化を以下にまとめてみました。
I have used computer modeling and simulating to examine a 6m QRP vacuum tube linear amplifier for demonstration of vacuum tube equipment in the fields.

Reasons...
①10数年前に比べて、真空管の値段が急騰している・・・在庫が底をつき始めている・・・ロシア製と中国製はあまり使いたくない?。
The prices of vacuum tubes go up.... the stock of new vacuum tubes has decreasing.
②真空管用の部品を扱っている店も少なくなってきた・・・中古が殆どだけど・・・ほんとに秋葉原でも少なくなった。
Vacuum tube shops go on decreasing.
③手持ちの真空管用の部品も今のうちに使っておきたい・・・もう今さら真空管でもないしね。
でも、昔ながらの回路で、昔の本を参考にして作ってもおもしろくないので、新しい発想の回路を導入して、「真空管といえどもおもしろいことが出来るんだ」というものにしてみました・・・つもりです。
Vacuum tubes stock in hand will be used up within these years.

Features...
①DC12VからDC250Vを得る高周波スイッチング電源を搭載
A high voltage switch mode power supply with high switching frequency (about 100kHz).
②RFパワーを可視化するためのマジックアイ搭載
An electron ray tube indicator to make RF power visible.
③ドライブ信号による送受切替・・・これは目新しくないですね・・・でも、10mWぐらいでも動作するように新規に設計してみました。
A transmission/reception switch by RF drive signals.

2.構成
リニアアンプのブロック図を次に示します。
Block Diagram
周波数は、フィールドで簡単に遊べるということで、50MHz帯とし、出力は4Wを目標としました。エキサイターはQRP機とし、1W以下で充分ドライブできる構成としました。また、同調指示にマジックアイを搭載することとし、フィールドでもチューニングが容易なようにしました。
とりあえず、入力レベルは100mWとし、4Wが出力できる充分余裕のある構成としました。エキサイター(親機)は、ある程度自由度があって、自作のポケットサイズのものから市販のQRP機まで接続できるようにしました。このために、入力のドライバーアンプの入力に固定のアッテネーターを装備することとし、機種にあわせて減衰量を可変できるようにしました。

3.ドライバーアンプ
Driver Amplifier (6AU6)

ドライバーアンプは6AU6によるA級の電圧増幅器で、6AU6の負荷であるファイナルパワーアンプ6AQ5のグリッド回路に約14Vop(約10Vrms)の電圧を供給します。ドライバーアンプの検討のための数学モデルを次に示します。
R3、C3は後段の電力増幅器の入力インピーダンスを模擬したもので、R2が負荷抵抗です。L1は真空管の浮遊容量をキャンセルし50MHzで並列共振させて負荷を純抵抗に見えるようにするためのものです。R5は入力のインピーダンスマッチング用の抵抗で、R6、R4、Ciで減衰器を構成し適正レベルまでエキサイターからの信号を減衰させます。取り敢えず、入力の信号レベルを0.1Wとして動作させた時の波形を次に示します。なお、実際には、エキサイターの出力レベルに応じてR6を調整する必要があります。
エキサイターの出力0.1W(すなわち3.16Vop)を6AU6の制御グリッドの入力レベルで0.22Vopまで約23dB減衰器で減衰させます。これを、6AU6で軽く電圧増幅して負荷R3で約15Vopの信号として取り出します。
なお、回路の簡略化のため入力には敢えて同調回路は設けませんでしたが、その代わりにインピーダンスマッチングが充分取れるように入力回路の定数を設定しておきます。
検討数学モデルにおける各部の波形を次に示します。



解析結果より、6AU6のプレート電流は、約5mA、スクリーングリッド電流がデーターシートより約2mAなので、カソード抵抗は330Ω、スクリーングリッド抵抗は51kΩが妥当なことが分かります(個体のばらつきによっては調整が必要です)。
なお、出力の負荷抵抗に並列に入っているインダクタは浮遊容量をキャンセルするためのもので必須です(無いと出力レベルが落ちます)。これは、空芯コイルで構成し、コイルの寸法を微調して出力レベルを最大にします。
このプレート同調用のインダクタL1の設計を行います。
シミュレーターでおおよその値として約0.76uHのインダクタンスが必要なことがわかりましたが、これを後から調整が容易なように、自立型空芯コイルで構成することにします。1.0Φのウレメット線を直径10mm、巻幅14mm、巻数12ターンで巻いてコイルを形成します・・・最初、0.6Φのウレメット線を直径20mm、巻幅25mm、巻数8ターンで作ったのですが機械的強度に難点があって設計変更しました。同調周波数の微調は巻幅を調整して行います。

4.ファイナルパワーアンプ
Final Power Amplifier (6AQ5)

ファイナルパワーアンプの検討のための数学モデルを次に示します。

効率の点から考えればAB級とすべきなんでしょうが、小電力で大げさなフィルタ回路も付けたくないのでここは無難にAB級というよりもA級動作に近い動作条件としてみました。
入力は、ハイインピーダンスで前段に真空管の電圧増幅器を置くことを想定して設計します。出力は、50Ω系のアンテナに接続することを考えますが、フィールドオペレーションに使うことを考えて、インピーダンスが少し振れても容易にマッチングが取れるようπマッチ回路としました・・・このような小電力簡易型の回路では、真空管の出力にタンク回路を設けてリンクコイルで負荷とマッチングをとるという方式も考えられますが、自由度があまり大きくないのではと思います。
この回路で理論的には、ドライブ信号のレベルを10Vrms(14.1Vop)・・・すなわち、AB1級ぎりぎりの動作で・・・約4.8Wが負荷に供給できます。もっとも、プレート電圧を250Vより上げれば5W以上の出力も可能ですが、定格オーバーですから、ここはプレート電圧が250Vとして、設計しました。
検討数学モデルにおける各部の波形を次に示します。



解析結果より、6AQ5のプレート電流は、約44mA、スクリーングリッド電流がデーターシートより約4mAなので、自己バイアス方式とした場合のカソード抵抗は300Ωが妥当なことが分かります(個体のばらつきによっては調整が必要です)。実は、最初は固定バイアス方式を考えていたんですが、回路の簡素化及び次の理由から自己バイアス方式にしました。
なお、プレートチューンのC3(本来はC1と思うが・・・)を可変しても、A級動作の場合、プレート電流のディップは殆ど無い・・・AB級の場合明らかにディップするため、固定バイアス方式にすべきと思われますが・・・、ので自己バイアス方式でも十分性能が出ると思われます。逆に自己バイアス方式であると、プレート電流のディップの状況からパワーが負荷に吸い込まれているかが電流計によって判定できないというデメリットがあります。
解析結果より、プレートチューンC3は10pF程度のトリマコンデンサが、また、ロードチューン(アンテナチューン)C2は100pF程度のバリコンが適していることがわかります。真空管の浮遊容量が大きいためか、はたまたA級動作としているためか、本来のプレートチューンC1は完全に抜けた状態なので、結合コンデンサC2で同調をとることになってしまいましたが、ここは実機において調査が必要と思われます。ただ、この構成の難点は、C3は高電圧がかかった状態で浮いているということなので実装上注意が必要です。
この回路に使用する部品で、現在入手性が問題になるのは、電源ラインに入れる100uHのRFCとπマッチ回路のインダクタとバリコンです。まずRFCですが、入手難になることを予測して昔売られていた1mHのRFCを何個か買ってあったのですが、いずれも50MHzでは自己共振が影響してまったく使い物にならないことが分かりました。自作することにします。
これは、重畳直流電流が少ないことからフェライトのFT#61材が使えそうです。次に設計結果だけを示します。

100uH RFC:FT50-61 0.3Φウレメット線 38ターン

次に、πマッチのインダクタですが、空芯コイルでも作れそうですが、耐震性や性能の安定化のため高周波電流が流せる鉄カーボニルコアを使って設計してみました。

3.4uH インダクタ:T50-10 0.3Φウレメット線 33ターン

なお、バリコンについてはよい代替品が無くジャンク品を探すしかないのかもしれない・・・現在は、受信機(ラジオ)用のバリコンも作られていないようですし、新品同様の品物なんかはすごく高価です。

5.同調指示(マジックアイ)
RF Output Power Indicator (6R-E13)

ここまでの議論でもうお分かりと思いますが、プレート電流計で出力マッチング回路の同調状態が判別しにくいため、RF出力が正しく出ているかどうかをRF出力を直接拾って読み取る必要があります。それで、これをマジックアイでやってみようというわけです。
6R-E13のデータシートは無いようなので、6E5のデータを流用して設計します・・・変更点は実機で調整します。
B+電圧(ターゲット電圧):250V
プレート抵抗:1MΩ
として、表示窓とグリッド電圧の関係は、
ほぼ閉:-6~-8V
全開:0V
なので、RF出力が無い場合にグリッド電圧を0Vとし、RF出力4Wでグリッド電圧を約-7Vとすれば、適切なRF出力表示が出来ると思われます。RF出力電力の検波回路を次に示します。検波ダイオードはVU帯で使えるショットキーバリアダイオードを使います・・・ダイオードの耐圧に注意が必要です・・・シミュレーションは保有モデルの関係で1SS97になっていますが1SS97-2なら1本で大丈夫。

検討数学モデルにおける入出力特性を次に示します。


実機では、R4を調整してRF出力4Wで表示窓がちょうど閉じるようにします。なお、半分閉じた状態で約1Wの表示となります。次に、この回路の応答特性を調べてみたので、その結果を次に示します。



シミュレーション結果より、立上がり、立下りの時間は10us程度なので殆ど瞬時にリアルタイムに電力表示できます・・・出力のフィルタの定数から当然といえば当然の結果ですが・・・。

【実機によるデータ取得(DC編)】
Actual data of the linear amplifier... DC characteristics.

製作したリニアアンプのDC動作特性をチェックし、調整できるところは調整しました。


入力電圧=13.8Vで
フィラメント電圧=4.98Vとやや低めです・・・低すぎかも??(後述の理由で上げられず)
B電源が267Vで、こちらはやや高め・・・うまくいかないもんですね・・・??
スイッチングのデューティはやや絞っています。


スイッチング周波数=約120kHz
デューティ=約39%
6AQ5のグリッドバイアスを少し浅くしてプレート電流をもう少し流し、B電源電圧を下げるというのが現実的ですが・・・?
それで、6AQ5のカソード電流をチェックしてみたら、36mAしか流れていない。シミュレーション解析値よりかなり少ないので、カソードの自己バイアス用の抵抗値を下げる必要がありそうです・・・現在330Ωを270Ω(E-12系列)または300Ω(E-24系列)に変更することを検討してみる必要がありそうです。
なお、6AU6のスクリーングリッドの抵抗は24kΩでスクリーングリッド電流が約2mA、カソード電流が7.5mAで、ほぼシミュレーション解析どおりの値になるようです。

【おまけ】
中国製の電流計、新品なのに壊れていました(断線)・・・現在、6AQ5のプレート電流(実際はカソード電流)は監視せずに動かしています。

【リンク】






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